
先日、古い桧の材料を扱わせていただく機会がありました。
170年程前に構造材として使われた桧の材料で、今回の建物修復で取り替えとなりましたが
処分してしまうのは忍びないという事で加工し再利用されました。(素晴らしい発想です)
その古い桧は柾目材で等級としても一番良いクラスの材料ではあるのですが、
普段扱う桧とは全く違い、加工すると固く、表面も光沢や艶が素晴らしい良材でした。
ここ10年以内に伐採されしっかりと乾燥された材料の状態と
170年前に建築材料として使われた材料の現在の状態を比べると
明らかに古い材料の方が良いものであると感じました。
この違いについて少し考えてみます。
一般的に桧の材料は伐採から200年経過するまで強くなり続け、
そこから徐々に弱くなり1000年経つと伐採時の強さに戻ると言われています。
(木曽桧は1000年経過まで強くなるそうです。)
今回の桧は柾目材ですので、100年以上の樹齢の木だと思います。
当時はおそらく木を大事に製造していたと思うので、
伐採後、葉枯らし乾燥後搬出。製材後4~5年以上は天然乾燥はしているでしょう。
それから材料として使われているので、すでに生まれてから300歳以上経過した木という事になります。
つまり、捨てられるような木ではなく、今が一番強く丈夫な木で、今後もそれが数百年続く「現役」の材料となります。
「良材」の定義は、節の無いもの、割れの無いものなど、今現在の状態を指すことがほとんどですが、
10年後50年後100年後に「良材」と言われるような木材を製造することが製造者としては大事であると思います。
10年後に取り壊される建築でしたら、10年間くらい強度を保つ木材でいいと思います。
しかし100年、200年と腐り朽ち果てない建築を作るには、先人が考えてきた製造工程を守り、
さらに更新して材料を作ることが大事であり、そのことにより「良材」を作り続けることができると思います。
日本の木造建築は、勤勉で真面目で努力家な性格の日本人が何百年という長期スパンで試行錯誤を繰り返して作り上げた世界に誇る木造建築です。

桂離宮、松琴亭
※私個人の感想ですので、科学的な根拠は存じません。